不健全な精神
健全な精神でいたい、いなければいけないという強迫観念に似た感情が自分のなかにずっとある。
原因はわりとはっきりしていて、わたしの母親はうつ病だった。調子が悪いときはまるで会話にならなかったし一日中寝ていたし、ひとに何か言われるとめそめそ泣いていた。わたしは母がそういう状態のときはどうしていいかわからなかった。
祖母、つまり母の母が、「明るくていい子だったんだけどねぇ」とよく言う。わたしは明るくていい子だった母を知らない。
同居の義母(つまり父の母)と上手くいかないと言って泣き、パートで始めた学習塾を生徒にいじめられたと言って辞め、いちにち布団の中で眠ったり食べたり本を読んだりしていた。
明るくていい子で聡明だった母は、学者か小説家になりたかったのだという。
母を思うときじんせいのままならなさを思う。人間の心は脆い、壊れてしまわないように生きていかなければいけないと思う。
ちなみに母は義母が身体をあちこち悪くし、父が病気になってから「自分がしっかりしなければ」と思ったのか「このひとたちはもう恐るものじょない」と思ったのか、割に元気にしているそうだ。